中医基礎理論講座 サンプル問題




■3・1・1 心
練習問題
テキスト抜粋



<練習問題>

---------------
 心の問題
---------------

中医基礎理論講座


中医基礎理論講座


中医基礎理論講座

<参考テキスト>

■3・1・1 心
解剖位置 : 心は胸腔にあり、横隔膜の上に位置する。
生理機能 : 主な生理機能は二つある。
① 血脈を主る。
② 神志を主る。
五行との関係: 「火」に属する。
心は生命活動の中心となるため、『素問・霊蘭秘典論』では「君主之官」と呼ぶ。
「君主之官」 : 「君主」は皇帝を意味する。「君主之官」とは心が体の中で、君主のような役割を果たしていることを意味し、病気が重くなればまず心を守る必要がある。



■1 心(しん)の主な機能


(1) 血脈を主る
「心主血脈(しんしゅけつみゃく)」とは、心が「けつ血」と「脈」の二つを管理している。
血は、全て脈中(血管)を通じて絶え間なく運行し全身に運ばれ、身体、臓腑、組織器官を滋養する栄養物質である。 脈は血が循環する通路であり、血の正常な運行に不可欠な器官でもある。「けいみゃく経脈」または「けつ血の府」とも呼ばれる。 中医学では「血と脈を主る」重要な働きを心の拍動によるものとし、この拍動は「しんき心気」によって行われている。 この意味から心気は「血脈を主る」と理解できる。

心気は心の拍動する力とリズムを維持し、拍動の規律と拍数を調和することができる。心気が充実していれば心の機能や心拍数、脈拍などが正常に維持され、それによって血は脈中を正常に循環し、絶えることなく全身を滋潤する。

● 心気が正常の場合では、外に反映する象は主に二つみられる。
1 顔色は艶があり紅く潤う。
2 脈象が穏やかで力も規律もある。
臨床で常に顔色を観察する目的の一つに「心主血脈」の状態を観察するためである。


(2)神志を主る
「しん心しゅ主しん神し志」とは、心が感情で人の精神、意識、思索活動を支配するという働きを指す。
「心主神志」を「心は神明(しんめい)を主る」或は「心は神(しん)を蔵す」とも呼ぶ。

蔵象理論では、ぞれぞれの精神、意識、思惟活動の管理機能は五臓の機能に分担されるが、心は特に重要である。この理論について《素問・邪客篇》では「心は五臓六腑の大主なり、精神の宿る所なり」と記載している。

● 神(しん)の概念については、二つの要点がある
1 人体の生命活動の重要な組成部分である。五臓の中の「しん心」と最も密接な関係にある。
2 「神」は「広義の神」と「狭義の神」がある。

<広義の神>
人体の外部に現れた生命活動の全てを意味する。例えば姿形、顔色、眼光、言語の反応、肢体の運動状況までもが神の現れで、生命活動が外部に反映されたものを「神気(しんき)」と言う。

<狭義の神>
「心主神志」の神を指す。心が支配する感情で人の精神、意識、思惟活動である。
従って、中医学で指す「神」は宗教の分野で考えている「神様」とは異なる。「神」は「しん」と読み、「かみ」とは読まない。「神」は生命活動を表す専門用語である。

● 「心は神志を主る」と「心は血脈を主る」との関係:両者には相互関係がある。
1 「血」は「狭義の神」の物質的な基盤となる。「血脈を主る」の機能が正常であれば「神を主る」の機能は保障される。心の働きに異常が生じれば神志に異常が生じる。
2 「血脈を主る」を維持するのは心気である。心気に異常が生じれば、「神を主る」は失調する。
3 「神を主る」が失調すれば五臓六腑が混乱するので、「血脈を主る」も失調することになる。

<参考内容>
現代では人の精神や意識、思索活動は大脳の生理機能であり、大脳が外界の事象を反映すると理解されている。ところが、中医学では、これらの生理機能は心に属すると結論をつけている。 長期間の臨床では、心神不安、心血不足、たんしつ痰湿へいきょう閉竅、心血おそ瘀阻などとの疾病の闘争では「神を主る」などの理論を利用して、病気の診断と治療に非常に役立てきた。 この理論は解剖の意味だけではなく、主に其の生理機能と病理判断、治療の指導に重要な意味があると考えている。



■2 心の志、液、体と九竅


(1)心の志(し)は喜(き)
蔵象学説では、五臓の生理機能によって発生する感情「喜・怒・憂・思・恐」を五志と呼び、五志は五臓に分けて配属される。五志は外界からの情報によって人の感情が受ける情緒の変化は、五臓の生理機能により生じると考えられている。

「心の志は喜」は《素問・挙痛論》に記されている。
気緩(きかん)とは、心気が弛緩するという意味である。喜びは人の精神を興奮させ、心情をのびのびとさせ、気機を発散させ、通じさせることができる。しかし喜びが過ぎると、気機を過度に発散させることになり人の精神を散漫にし、心気を弛緩させる。 臨床では、気緩によりしんき心悸、失眠などの症状が見られる。 心の生理機能と「喜び」の感情との関係を表している。喜びは心の働きの状態を反映すると共に過剰の「喜び」は心の病気を誘発するという意味である。


(2) 心の液は汗
汗は、しん津えき液が陽気の影響を受け蒸発し、気化したものがげんふ玄府(汗孔)から排出される液である。汗の排出にはえ衛き気がそう腠り理を開閉する機能も必要である。腠理が開けば汗が排出され、腠理が閉じれば汗は出ない。 汗は津液により作られるが、血と津液の源は同じなため、汗が多く出ると津液が傷つき、血も影響される。したがって、汗の状態も心の機能を反映することから「心の液は汗」といわれ、また「汗血同源(かんけつどうげん)」と言われる。


(3) 体は脈に合し、その華(はな)は顔にある
「脈」とはけつみゃく血脈である。「しん心ごう合みゃく脈」(心は脈に合す)とは、全身の血管すべて心に属していることを指す。体の血脈に病気がある場合に、まず心に問題があると考える。 例えば、瘀血がある場合には、まず心臓との関係があるか否かを考える。 「華」とは色艶のことを指す。
「心の華は顔にある」とは、血脈の状態が顔の色艶に反映することを意味する。頭顔面部に血脈が集中しているため、心気が旺盛で血脈が正常であれば、顔色が紅く潤沢、つやが良いとなる。逆に心気が不足すれば顔色は、白っぽくなる。血脈に病気がある場合には黯淡で艶がなくなる。


(4) 舌に開竅(かいきょう)する
「竅」とは、五臓が外とつながる場所である。 「心は舌に開竅する」は、舌は心のがい外こう候で「心の苗」であると言われ、舌に心の状態が反映される。舌の味覚と言語の機能は心の「血脈を主る」と「神志を主る」と深く関係する。その為、心の生理機能に異常が生じると味覚異常や舌のこわばりなどの症状が発生する。 舌面は表皮に覆われていないので舌質の色、艶は気血の運行状況を直接知ることができる。

・心のようき陽気不足:舌質淡白、はん胖だい大、どん嫩が見られる。
・心のいん陰けつ血不足:舌質こうこう紅絳、痩小、乾燥が見られる。
・心火上炎(しんかじょうえん):舌質紅、或は潰瘍が見られる
・心血瘀阻(しんけつおそ):舌質しあん紫黯、或はおはん瘀斑が見られる
・神志を主る機能の異常:ぜつかん舌巻、ぜつきょう舌強、失語の症状が見られる