気虚と肝うつの違いとは?

疲れているように感じている患者さんをみて、この症状が、気虚によるものなのか、肝うつによるものなのか。その見立てによって、処方する漢方薬も全然違ってきます。
そもそも、気虚と肝うつでは体内で何がどう違うのでしょうか。これは、貨物列車が荷物を運んでいることをイメージするとわかりやすいと思います。
肝うつは、荷物(気)がたくさん積まれている貨物列車があるにもかかわらず、線路(気の流れ)の不具合で列車が停まっている状態。
気虚は、線路には問題がなく、貨物列車に荷物がないから何も届かない状態です。
荷物(気)を積んだ長い貨物列車が、線路(気の流れ)の問題で停まっている場合(気は十分にある)、線路を修復せずに、強い気をどんどん補充していったら、倉庫にも線路にも荷物があふれ、もし人参或いは補中益気を飲むと、余計な混乱を増やしさらに別の病気をも引き起こしてしまいます。
では、気虚なのか肝うつなのか、あなたは何をもって判別するでしょうか。
病気というのは複雑な要因によって発症します。病因病理を理解しないと、病気の判断はできません。そこで問診によりさまざまな角度から判断していくことになります。
たとえば、ストレスによって疲れの症状がすぐ悪化するかどうかは、肝うつの判断基準になります。シミが出てきた、やる気が急にガクンとなくなった、よくため息など…というのは気虚による「疲れ」ではありません。
となると、この患者さんに使うべき薬は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)ではありません。肝うつの患者さんに朝鮮人参を中心とする製剤を使えば、病気がさらに悪化するのです。
既に気の流れが詰まっているところにさらにたくさんの気を投入して詰まらせるわけですから、疲れは一層ひどく、強くなるでしょう。その副作用は熱や炎症といった症状が特徴で、目の充血、かゆみなど結膜炎の症状が出たり、鼻のかゆみなどが現れる場合があります。中医学の治療原則から見ると、これは治療ではなく寧ろ「朝鮮人参などの中薬が人に害を与える行為」となります。これは、朝鮮人参或いは補中益気湯が悪いではなく、投与する側のミスです。
肝うつに効果的な漢方薬としては、逍遥散(しょうようさん)や、加味逍遥散(かみしょうようさん)などが考えられます。
では、どちらを使うべきか。その判断には、さらにもっと細やかな分析が必要になります。ここが、プロの世界に必要な深さなのだと思います。逆に言えば、このような分析ができなければプロではないのです。

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