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気血津液について

2010-04-25 15:54



中医学では、五臓六腑のほかに、人の体は気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)の3つで構成されていると考えます。従って、中医学では病気は五臓六腑に多いが、気血津液とも深い関係があると考えています。


■気


中国古代の哲学では、自然に存在する「気」が宇宙のすべての物を形成する基本物質であると考えます。日常生活において「気持ち・気分・気力・意気込む」など、「気」という言葉は多く使われています。中医学では体に存在する「気」には二つの意味があると考えます。一つは人体を構成する最も基本的な物質です。一つは生命を維持する基本物質で、則ち体の活動を行うエネルギー源です。

体の気は、主に食べ物を消化吸収する栄養で作られますが、自然の気を取り込んで体の気を作ることもあります。
ストレスや疲労、不摂生などの原因で、気を消耗したり停滞させたりすると「気」の病気を誘発します。

「気」の働きは七つあります。

(1)体の栄養作用です
 気が不足すると、疲れやすい、だるいなどの症状が生じます。

(2)臓器の働きです
 気が不足し停滞する場合、五臓と六腑の働きが弱くなります。

(3)血液や津液の全身へのめぐりを促進する
 気が不足し停滞する場合、瘀血と痰飲という病理産物が生じます。

(4)体、血液、津液を温める
 気が弱くなる場合、冷え性、寒さへの抵抗力が弱まる、瘀血、痰飲などが生じます。


(5)病気を防いだり抵抗したりする免疫機能
 気が不足する場合、カゼを引きやすい、病気にかかりやすい、中々回復しにくいなどの症状が生じます。

(6)汗や出血などにより体液や血液が外へ漏れ出るのを防ぎ「収める」
 気が不足する場合、汗が異常に出る、出血の病気(内臓の出血と女性の不正出血)などが生じます。

(7)体のそれぞれの物質を代謝して栄養物質に相互転換させる
 気が不足し停滞する場合、便秘、下利、小便不利などが見られます。また、食べても中々元気にならないなどが生じます。



■血


中医学でいう「血」とは、脈管中を流れる赤い液状物質を指します。血は営気と津液の混合で作られるものです。血に営気が含まれるという点では、現代医学でいう血液の意味と少し違うと考えています。

血は「けつ」と読みます。中医学でいう「血」には、病気の場合は、血の不足と血の流れの停滞を含みます。

血の働きは主に二つあります

(1)身体を栄養し潤す
 筋肉、皮膚、骨、目、五臓六腑などに栄養を与えます。「血」が充実していれば顔色も艶やかで皮膚にも潤いがあり気持ちも安定します。
「血」が不足すると貧血やめまい、顔色が暗い、皮膚と目の乾燥が強くなるなどの症状が出ます。
 血は、肺、大腸、肝などを潤し、血が不足する場合、空咳、便秘、痙攣なども見られます。

(2)精神活動を支える栄養源
 主に精神の正常活動をサポートします。そのため、血が不足すると不眠や不安感、物忘れ、ストレスなど、精神活動に影響が出てくる場合があります。

(3)特に女性の健康に深く関与します
「血」は女性の月経、妊娠との関係が非常に深いです。血の病気(不足及び停滞)で生理痛、生理不順、不妊症、PMSなどを引き起こします。


■津液(しんえき)


津液とは、身体を潤し栄養するきれいで体に存在する生き生きとした状態の水分です。血液のほかに、「唾液・胃液・涙・汗・精液・膣液」などが津液に当てはまると考えられます。

津液の病気には不足と停滞があります。津液が不足すると喉の渇きや皮膚の乾燥、便秘、目の乾燥などへとつながります。停滞する場合は尿の排泄に障害や痰及びむくみなどの症状が見られます。


■経絡・経穴(けいけつ)


経穴(けいけつ)はツボを意味します。鍼灸治療ではどうしてツボに鍼や灸をするのでしょうか?

ツボは経絡に存在する接点で、経穴は経絡上に点在しています。経絡(けいらく)は気血が流れ、人体の上下・内外をめぐる通路です。経絡は五臓六腑の間の連絡、五臓六腑と皮膚・筋肉・関節・筋に繋がる通路でもあります。

五臓六腑に不調がある場合、その臓腑に関連した経絡の気血の流れが悪くなります。そうすると流れの悪くなった経絡上に痛み・しびれ、色の変化などの症状が出てきてしまいます。これらの病情は特に経絡上のツボに反応として現れます。たとえば、ツボが硬くなる・へこむ・ざらつく等です。これらの反応の特徴は内臓の虚実寒熱などを反映します。そのため、中医師はツボに現れた反応を見ることで五臓六腑のどこに不調が出たのか、病気が虚か実か寒か熱かを判断することが出来るのです。

つまり体表面のツボは五臓六腑が経絡によってつながっているので、ツボに鍼や灸をするとその刺激が経絡を伝わって五臓六腑や目的の場所へと伝わり、治療効果を挙げられます。従って、経穴は体の不調を反応する場所でもある一方、治療の場所でもあります。

また、ツボを刺激する方法は鍼と灸のほかに、整体や指圧などもあります。これらの方法では病気の場所と寒熱虚実を判断してから、適切にツボを選んで施術します。しかし弁証せずツボを刺激すると、逆に健康に害を為す場合もあります。



この記事の執筆・監修

董巍写真

中医学アカデミー代表・世界中医薬連合会常任理事・中医師
董巍

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