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中医婦科 月経病

2020-03-13 11:00




女性の健康状態を確認するうえで月経について把握しておくことはとても大切です。
月経について無頓着な方もいらっしゃいます。
例えば、治療者側が「生理はどうですか?」と尋ねると、「普通です。」と、
答えられる方が結構おいでになります。
もちろん、問診する側の曖昧な質問に対して答えようがない、または相談者側が普段の生理の状態を
それほど気にしていないなど両面がありますが、女性にとって健康のバロメータになるので
中医婦科の月経病の診断基準などを紹介します。

婦人病のうち月経に関する各種病症は、月経経期、月経量、経血の色、
月経の質などの異常を兼ねます。
これらの病証は主に月経先期、月経後期、月経先後無定期、月経過多、
月経過少、月経延長、経間期出血、崩漏、痛経、閉経、経行眩暈、経行泄瀉
経行浮腫などの症状が含まれます。

治療においては鑑別、弁証が必要です。参考になさってください。


■ 正常な月経


周期的子宮出血の生理現象で通常一ヶ月前後の周期的に来るところから、
「月経」、「月事」と呼び、経水、月事、月信(毎月に至るの意)とも呼ばれる。
一般に14才前後で来潮が始まり49才ぐらいで月経が閉止する。月経が正常であるかどうかは
月経期間の間隔、経量の多少、経血色の濃淡、経血の濃淡などの幾つかの面から判断される。
正常の女子の経血は暗紅色で、最初はやや淡く、中間はやや深みが加わり
最後にはまた淡紅を呈する。
質は凝結せず、血塊はない、薄かからず濃からず、特殊の臭気もない。
経量は適量で、月ごとに来潮する。これが健康の象徴である。
もし月経の期、量、色質の面に変化があれば、それは病態に属する。

・月経周期    :周期は、25日~30日前後
・月経量(経血量):特段の増量または少量ではない
・経血の色    :赤または暗赤色
・経血の質    :大小の塊が混ざらない
・月経痛     :特段の痛みはない
・排卵期の下腹部の違和感、帯下(臭いや色がない)の増量は正常

■ 月経病


1.月経周期の異常


常に月経周期は正常範囲であっても、偶に周期が遅れる、逆に早まることがあるが、
このような場合は一時的なことで月経病の診断はしない。

月経先期


月経の来潮が正常の周期より一周間以上早まり、甚だしいものは一ヶ月に二度来潮する。 一般に本病は「熱」に属するものが比較的多くみられる。
経血量は多く、色が深紅、質が濃くかつ煩躁、口が乾き、脈が数ならば血熱に属する。
もし経血量が少なく、色が鮮紅で、質が薄く、手のひら足の裏が熱ければ、血熱に属する。
気虚等の症状は経血量が多く、質が薄い、色が淡い、顔色蒼白、精神や肉体の疲労、
気力がなくしゃべらない、頭重、めまい、舌は淡で脈遅である。
この他、肝鬱あるいは血瘀に属するものも比較的多く見られる。

月経後期


月経の来潮が平時の周期より一周間以上遅れること。経遅ともいう。
血虚、血寒、痰阻、気鬱血瘀など多種であるが、虚証、寒証が多い。
虚証の多くは腹痛が続き押えるのを好む。もし経血の色が淡く、量が少ない、
質が薄い、身体が衰弱し顔色が蒼白ならば、血虚症に属する。
経色が鮮紅、あるいは黒くて少量、悪寒や倦怠、四肢が冷えるのは、寒証に属する。
経色が淡くてねばりがない、帯下が続き、心悸(しんき)、めまいがするのは、痰阻証に属する。
経行が不調で、下腹部に痛みを感じ、腰がひっばられるように痛む、
あるいは乳房が脹って痛むのは、気鬱症に属する。 経色が暗紫色で血塊が多く、下腹が痛み押えるのを拒み、手で押えるとしこりがあるのは、血瘀証に属する。

月経先後無定期


経乱ともいう。
月経が正常の周期どおりに来潮せず、早すぎたり、遅れたり、月経周期が定まらない。
酷い場合、月経が連続して三周期以上ずれることもある。
本病がひき起こされる原因は非常に多く、腎虚、肝気鬱結、脾虚、瘀血阻滞によるものなどがある。
臨床によると、腎虚に属するものは、経色が暗淡、質が薄い、まぶたが暗黒、腰や脊がだるく痛み
力がない等の症状が見られる。
肝気鬱結に属するものは、経色が暗紅、腹と脇が張るように痛み、怒りっぽい等の症状が見られる。
脾虚に属するものは、四肢の倦怠、消化不良、下痢や軟便、経色が淡く、粘液が混じる。
瘀血阻滞に属するものは月経に常に血塊が混じり、下腹を押えるのを拒む。

2.月経量の異常


月経過多、月経過少がある。

月経過多


月経来潮時に正常の血量を超過、あるいは来潮の日数が延長し、七日以上に及び経血が過多になるもの
ただし一ヶ月に一回の周期性を失わず周期内に止まる。
この証の多くは血熱、また衝・任脈が損なわれている、あるいは「気虚不摂」によって生じる。
血熱のものは、経血の色が深紅で質が濃厚、臭気がある。
衝・任脈が損なわれたものは、月経がいつまでも続き、顔色が萎黄、身体がだるい、経色は暗淡で質は薄い。
気虚不摂のものは、顔色が淡白で気力がなく話をしたがらない、経色は淡い。

月経過少


周期はほぼ正常であるが、経血量はごく少量で1~2日程度できれい終了するものを指す。
「月経渋少」、「経血不爽」ともいう。
臨床上では、血虚、血寒、血瘀及び痰湿等の証に分けられる。

更年期に近い婦人にはこういう証候がみられる。
もし毎回の経量が極めて少ないか、全然出血しない状態が長期にわたり治らない場合は
生殖系統の異常を考慮し、すみやかに治療しなければならない。

3.経期延長


月経周期は正常なものの経行期間が7日以上か、或いは半月ほど淋瀝してきれいに止まらない。
実証は衝任脈の瘀血阻滞、虚証は陰虚内熱による血海の擾動である。

4.月経痛(経痛)


「経行腹痛」ともいう。月経前後あるいは月経時によく見られる、
下腹及び腰部の痛みを主症とする婦人科疾患である。
本病の発生は、多くは気滞、血瘀、寒凝、あるいは血虚によってひき起こされる。
気滞によるものは、多くは月経前に下腹が痛み、痛みが脇肋に及ぶ、あるいは乳脹などがみられる。
血瘀によるものは、多くは月経前または月経が来た直後、下腹が刺すように痛み押えることを拒み、
経色は暗紫色、あるいは瘀塊(おかい)がある。
寒凝によるものは多くは下腹が冷痛あるいは絞るように痛み、暖めると痛みが軽減する
経行は不順で、色は暗滞である。
気虚によるものは、多くは月経後に腹部及び腰部がしくしく痛み(隠痛)、
押えるのを好む(喜按)、月経の量は少なく色は淡く質は稀薄である。

<月経痛の特徴>
実証:痛みは経前や経期に生じ、痛みは激しく拒按(触られたくない)を呈す。
虚証:痛みは月経後に生じ、隠隠作痛(しくしく痛む)で喜按を呈す。
寒証:冷えると痛みが強まり、温めると痛みが和らぐ。絞痛・冷痛する場合は寒に属す。
熱証:温めると痛みが増幅する。灼痛の場合は熱に属す。
血瘀:痛み方の特徴は脹痛、刺痛で激しく、血塊を排出すると痛みが軽減する。
気滞:痛みの特徴は、脹痛を呈する。
肝:痛みが両脇側或は少腹に有る場合の病は肝にある。不安やイライラなど精神的な影響を受ける。
腎:痛みが腰に連なる場合の病は腎にある。

5.閉経


発育が正常な女子は、平均14才頃になると来経する。
18才を過ぎてなお月経がないか、あるいはすでに月経は来たが、妊娠、授乳によらずに
三か月以上も月経が中断し、同時に病状が現われたものを、「経閉」または「不月」と呼ぶ。
しかし病がないのに月経が月々来ない婦人もある。月経が二か月に一回来るものを「併月」といい、
三ヶ月に一回来るものを「居経」または「季経」という。
一年に一回月経の来るものを「避年」という。甚だしい場合は、一生月経が来ず
あるいは毎月定期的に腰にだるい感覚があるだけで受胎するものがありこれを「暗経」と呼ぶが、
こういう状況は極めてまれである。
経閉は一般に血虚と血滞の二つに分けられる。

①血虚
血虚には、脾虚と心腎が損なわれた心腎両虚が含まれる。
脾虚によるものは、常に顔色が黄色、疲労、めまい、消化不良、
腹が張って不快など等の症状がみられる。
心腎の損なわれたものは顔色蒼白、腰膝のだるさ、心悸気促、眩暈、耳鳴、
手のひらや足の裏が熱いなど等の症状がみられる。

②血滞
血滞には、気滞血瘀と寒湿凝滞が含まれる。
気滞血瘀によるものは、顔色が暗紫色、下腹部が痛み押えるのを拒み、
あるいは痛みが脇部に及ぶ。
寒湿凝滞によるものは、顔色が青白い、下腹部が冷えて痛む、冷えをいやがり、
胸苦しく吐き気があり、兼ねて白帯がみられる。
なお、経閉は「閉経」である。中医古書は習慣上「閉経」を「経閉」と称している。

6.崩漏


月経期間ではないのに、陰道内に大量の出血や出血が続き淋漓(ぽたぽた続く)として止まらないものをいう。
経血量が多く急激に発症するものを「血崩」、「崩中」といい、経血量は比較的少ないが、
継続するものを「漏下」と呼ぶが、崩と漏は互いに転化しあう。
経崩ともいう。月経期間でないのに、陰道内に大量の出血があり、
あるいは出血が続き淋瀝(りんり)として絶えざる病症をさす。
出血量が多く急激に来るものを「血崩」あるいは「崩中」と言い、出血量は比較的少ないが、
いつまでも続くものを「漏下」と呼ぶ。
崩と漏は互いに転化し合うので、臨床上では「崩漏」という。
臨床上では、気虚、血熱、血瘀等の型に分けられる。
産婦人科の多くの疾病(機能性子宮出血、子宮腔内や内生殖器官の炎症、腫瘤など)は、
崩漏をひき起こすことがあるので、早期に診断治療しなければならない。

7.経行乳房脹痛


月経期或いは月経の前に乳房の脹満と脹痛を主証とする病証を指す。
月経周期に伴う乳房脹痛が繰り返し発生し、月経後には段々に消失する。
主に実証と虚証にわけられ、実証の特徴は、月経前と月経中に発生し、
乳房に塊のようなものを触れる。
虚証の特徴は月経中及び月経の直後に発生することが多く、乳房が柔らかく塊はない。

この記事の執筆・監修

董巍写真

中医学アカデミー代表・世界中医薬連合会常任理事・中医師
董巍

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